いい子は家で - 青木淳悟 

スチュアート・ダイベックが描く生き生きとしたアメリカの家族の絆と対照的に、青木淳悟は日本の淡々とした家族の関係を描く。問題作だった前作「四十日と四十夜のメルヘン」とは調子が異なるが、線のずらし方というか唐突感というか読者の裏切り方がやはり青木流だ。それでいて現代性をしっかりと描き出すのだから不思議な作家といわざるを得ない。たばこの煙が竜巻になるくだりのような妄想と現実の入り交じるあたりが、一癖も二癖もあって、マニア心をくすぐる。青木淳悟の本棚チェックというのがあって、そこにあるガルシア・マルケス、カフカ、ボリス・ヴィアン、カート・ボネガット、福永武彦というラインナップをみれば相当納得できるものがある。要するに玄人向けだ。

ここに出てくる家族のあり方は読んでいて泣いたり笑ったりの波瀾万丈の家族ではなく、とてもつまらない今の日常の家族だ。だからつまらないといえば非常につまらない小説といってもよい。ただ、それを題材に虚構とも現実ともつかない境界で小説を進行させるその実験的姿勢を私は評価したい。予定調和のエンディングや理想的な家族像などどこ吹く風の、人間を見つめる観察と妄想の中間の視点を支持したい。生きていくということは元来そのようなものではないか。これからも青木淳悟には安っぽい価値観の強要することの真逆を突き進んで欲しい。
[ 2007/11/30 12:16 ] | TB(0) | CM(0)

僕はマゼランと旅をした - スチュアート・ダイベック 

更新を長期間怠っているが、忙しくて本を読んでいないのではなくむしろ良い感じのペースで読んでいる。ブログの更新の時間帯についつい寝てしまう毎日。遅く帰宅したらそのまま寝る。早く帰ると息子と決闘(とかいてデュエルと読むようならあなたもデュエリスト)の後、子どもたちに読み聞かせというか自作の物語(今一番人気は竜巻親子というお話)を話しているうちに自ら沈没というのが落ち。そんなどうでもいい話はさておき、以前このブログでも紹介した傑作「シカゴ育ち」のダイベックの新邦訳がこれ。もちろん柴田訳で2重に安心。

舞台は同じくシカゴ。連作短編の形式を取る本作は、短編集でいて長編のように物語がどこかで繋がる小説。その生き生きとした描写は、まるで自分がシカゴの町を少年期に過ごしたように感じるほどの鮮度を持つ。場所を超えて時間を越えて物語が目の前で起きているようだ。自由なアメリカ、くそったれなアメリカ、銃と犯罪のアメリカ、家族が素敵なアメリカ。いろいろなことがごちゃ混ぜになっているそんなアメリカの様子がリアルに伝わる。こういうアメリカなら過ごしてみたいと思う。「サー」と呼ばれる父親と、父親に寄せる兄弟の思い。部分が繋がり全体が覆われる。そしてその全体はとても大きな全体で、シカゴの一家族という最小単位をはるかに超えた普遍的な何かを私たちに伝える。とてつもなく面白い。
[ 2007/11/29 23:00 ] | TB(0) | CM(0)

マラソンと行列 

連れ合いのイベントの日。忘れ物を届けに行ってみると、ご覧のような行列。知ってはいたけど今回も満員御礼だ。イベントはイベントというだけあって、毎日でなく何ヶ月かに一回だから集まるのだろうけど、ココまでの人気は何なのかと考えてみる。それは「共感」なのではないかと思う。単に商品がかわいいとかデザインがよいとかそんなことでカタが付けば誰も苦労はしない。それ以上に売るべきなのは「共感」だ。それは一朝一夕にできるものではなく、商品力に加え、見せ方、売り方、WEBや冊子を作るなど、地道とも言ってよい努力の為せる技といってもよい。そしてその共感力を支えているのは彼女たちの人間力である。日常をよい方向へ変えていこうという姿勢だ。それをことさら熱く語ることなく空気にも似たメッセージとして伝える。なんとなくいい感じだなという空気がみんなに伝わる。とても素晴らしいことだ。いろいろな問題も孕んでいるようだが、少しずつ前へ前へと進んで欲しい。
[ 2007/11/28 23:33 ] いろいろ | TB(0) | CM(0)

kate walsh - tim's house 

最近はこればかり聞いている。ドタバタと流れていく毎日。作業をしたり依頼をしたり。仕切ったり仕切られてみたり。移動したりさせられたり。落ち着いて心を冷静にしたいとき、癒されるはずも無い会社での就業時間に、これを聞く。pastel recordsさんで購入。ブライトンの女性SSW。アコースティックでフォーキーで心にしみるサウンドが素晴らしい。いつもながらテラダ氏の眼力いや聴力には溜飲の下がる思いがする。pastel recordsさんで買うCDにははずれが無い。関係は無いけれどデュエル・マスターズのカードをイオンで買うとものすごくよく外れる。会社の近所の某ショップではいいのがよく当たる。はずれが無いというのはとにかくすごいことだ。
[ 2007/11/27 23:15 ] 音楽 | TB(0) | CM(0)

大丈夫ちゃんと生きてます 

新宿のOZONEで開催されている「第1回リスボン建築トリエンナーレ帰国展」へ。とても聞きたかったシンポジウムのほうは時間が合わずに聞けなかったが、仕事で知り合いになった今回の展示企画キュレーターの平さん(もちろんリスボン建築トリエンナーレのキュレーターは五十嵐太郎氏)の案内で展示を分かりやすく説明してもらい得をした。パネルをちゃんと読んだり、説明無しで展示の会場のデザインを体で感じるというのもあるのだろうけれど、裏話を含める口語の解説に勝るもの無しである。彦坂尚嘉+新堀学両氏による「超一流日本美術品を集結させた巨大美術館構想」のスケールの大きさとばかばかしさがすごい。なんなら前田建設ファンタジー営業部へ見積もり依頼を出せばいいのにと思っていたら、動向のT師匠が同じことを言っていたので驚いた。というか、彦坂氏本人がそこにいて、世間話にT師匠がそのネタを振ったら関心を示されていたので(社交辞令かもしれませんけど)さらに驚いた。アーティストはやはりスケールがでかい。皇居は負けず劣らずでかい。歴史が違うし。

建築家+写真家のコラボレーション展示があって、要するに建築家の作品をいろんなカメラマンが撮影するというものだったのだが、どれも面白かった。ここのブログでも紹介したことのある、平田晃久氏(+木暮洋治)の作品はどう考えても「空間は同時存在の秩序である」というライプニッツの言葉の写真的かつ建築的解釈だろうと納得。建築が消費財になりつつある悲しい昨今(ならなかった今までも悲しいけれど)、彼らのような奥の深い、どっしりした人物がいるなら安心だ。会場デザインの松田達さんにもお会いできてよかった。夜はsuzuさんとN氏と沖縄料理をいただく。ちょっと体調がいまいちだったが、気力のほうが充実した一日。
[ 2007/11/26 23:45 ] デザイン+建築 | TB(0) | CM(2)